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コスモス・システムズ Episode01 第3章



 一方、目標の地点から5kmまで離れた地点にやってきていたアーサーらの軍の一隊は、偵
察部隊からの連絡を待っていた。
「衛星からの情報によれば、住民に紛れ、集落の端に武器庫があるとの事。また、森林に隠さ
れて、地下施設があり、そこに重火器や軍用兵器なども置かれている様子です。ヘリなども隠
されているらしく―」
 と、アーサーの隣にいる隊員の一人が、衛星からの偵察映像を送ってきた。
 森林地帯の中にぽっかりと開いた空き地あるような姿の集落。頑丈なジープを持っていたと
しても、ここで生活していくのは少々不便だろう。
 反白人主義勢力の武器弾薬の隠し場所としてはうってつけだろう。
「住民はこの事を知っているのか?」
 と、アーサーは尋ねた。もし住民も一緒に反政府勢力に加担しているのならば、それは容赦
する必要はないという事だ。
 しかし、住民が無関係であるならば、巻き添えにする事は極力避けなければならない。もちろ
ん、そう上手くいくものではないが。
 アーサーが見ている画面には、電磁波探査によって、いくつもの兵器が映っていた。それ
が、民族解放軍が所持していると目されている兵器や、その他の勢力の兵器などとも比較され
ていく。
 該当は幾つもあった。人員解放軍が所持しているというものの他、こちら側、連邦軍の兵器
まであるではないか。
 都市から離れた場所とはいえ、国境の防衛線を乗り越えた先に、このような施設があったと
は。民族解放軍がこの施設と連携し、総力を上げれば、首都『ケープタウン』に総攻撃を仕掛
けることも不可能ではないだろう。
「この映像に外部からの干渉は無いか?」
「軍のファイヤーウォールにそのような干渉の痕跡はありませんでした」
 そのアーサーの質問は、今の時代、政府や軍で情報伝達をする際には、必ず交わされる会
話だった。
 干渉が無い。それは、情報機器に外部からの操作が無いという事だ。表面上、紛争や戦乱
ばかりが起き、武力衝突が絶えない世界だが、その一方で、情報機器の技術も10年前からは
遥かに進歩をしている。
 政府やインフラのファイヤーウォールも、日々更新しなければ、砂漠の真中のコンピュータか
らだって制御をすることができる時代だ。
 おそらく軍の上官達にとっては、一般人よりも守りたいのが、情報のはずだ。
 アーサー達は、情報連絡の際に何度もそのファイヤーウォールの損傷度を調べなければな
らなかった。
 敵対している民族解放軍だけではない、世界中のテロリストや反政府組織が、そのファイヤ
ーウォールの隙間から入り込もうと狙っている。
 衛星や偵察機からの情報だからといって、それを100%信じることができないのが、今の世の
中なのだ。
 まして、そのせいで民間人を巻き添えにしてしまっては、最悪の結末を迎える。
「では迅速にな。できれば、この集落の住民は避難させてから行動を起こしたい」
 と、アーサーは、光学画面を手で叩きながら言うのだが、
「しかし住民の中にテロリスト達が混じっていては、それは困難でしょう」
 部下に言われ、アーサーは決断せざるを得なかった。
「仕方ない。住民に対しては極力被害が出ないようにしろ、そして、迅速に行動するしかない」
 そのようにアーサーは決断するのだった。
「もしテロリストが住民を人質にとったなら?」
「テロリストとは交渉しない。分かっているな?」
 アーサーはそう即決して言うのだった。上層部からの命令は出ている。だから自分はそれに
従うだけだ。


「少し、疲れたわ…」
 と言って、少女は自分が被っている巨大なヘッドギアのような姿をした、情報端末から頭を離
した。
 室内は暗く、室内の灯りだけでは、その少女の顔を見る事はできない。だが、そこは彼女に
とって、とても落ち着いた世界だった。
 頭の中に洪水のように溢れてきている情報から、少しの時間でも離れた少女は、頭を垂れ
て、頭を休めようとする。
 その切り替え方を彼女は、一流の情報プログラマーよりもよく心得ていた。そうでなくてはや
っていられない。実際、少女は何度か意識を失いかけた事もある。
 頭の限界を繰り返し、探る事によって、彼女はそのセーブの仕方も覚えていっていた。
「お疲れですか?」
 その部屋へと一人の男が入ってくる。
 少女はちらりと顔を上げた。だが警戒はしない。入ってきた男は少女の良く知る人物だった。
 この場から最低限しか離れることができない彼女に世話をしてくれる、執事のような存在だ。
 褐色肌でダークスーツを着て、身長も高く姿勢もいい。肌の色と合わせてスキンヘッドなのは
少し恐ろしげな印象も受けるが、彼は少女にとって、唯一心を許せる相手だった。
「ええ、少し疲れてしまったみたい。だけれども、ほんの小休止よ。一番初めの、一番肝心なと
ころだからね。私がしっかりしなくちゃ」
 と言って、スーツの男が小脇のテーブルに置いたコップの水を飲むのだった。
 手が少し震えていた。これから起ころうとしている事への緊張感だろうか。
 今まで自分達がしてきた事は、あくまで影の出来事、そして下準備。
 だが、今から自分達は、表の世界へと出て行こうとしていた。極力、外の世界とは関わらない
ようにしてきたが、それでは何も動くことができない。
 これは、少女自身でしなければならない事だった。
「いつまでもこの部屋に籠っているわけにはいかないわ。外と繋がる時がきたのよ」
 そう言って、少女は行動を始めるのだった。
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