×

[PR]この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。

コスモス・システムズ Episode01 第5章


「伏せろッ!伏せろーッ!」
「敵襲だ!」
 アーサー達は、すぐにその場に身を伏せ、ジープを盾にしようとする。しかし、どこから攻撃を
してきているのだ?レーダーには何も映っていなかったし、上空を偵察する無人偵察機からも
何も連絡はなかった。
「どこだ!どこから来ている!」
 突然のログハウスの爆発に、住民達は混乱している。何が起こったのか分からないままパニ
ックに陥っているのだ。
 アーサー達は、彼らを守らなければならなかった。
「住民を避難させろ。最優先だ!」
 アーサーはそのように指示を出す。しかし、
「囲まれています。いつの間にか分かりませんが、囲まれているのです。何者かわかりません
が」
「何だと!」
 アーサーはそう言って、部下から渡された電子パットを見る。ついさっきまでは何の反応もな
かったのに、いつの間にか赤い反応が、集落を取り囲むように現れている。それが何を意味
するか、アーサーにも兵士達にも分かっている。
「こちらワールド。任務中に何者かに包囲された!」
 アーサーがそう無線に向かって言い放つ。しかし、その無線が通じていないらしい。
 彼らの元に続けざまにやってきたのは、銃声だった。マシンガンの銃声があちらこちらから聞
こえてくる。
 砂埃が舞い、銃弾が飛んできているのは明らかだった。
「攻撃を受けている!応戦しろ!」
 アーサーは混乱している住民達を守る体系を取りつつ、部下に命令をする。
「森だ!森の方角から来る!」
「敵は森の方角だ。囲まれているぞッ!住民達を守れ!」
 アーサーの部隊は円陣の体系を組もうとしていた。兵士達は訓練を受け、実戦経験もある。
だが住民は違う。
 あたかもそのまま戦地の中に放り込まれてしまったかのようだ。
 戦場で最も弱い、そして利用されてしまうのは住民達だ。民族解放軍の連中は、『連邦軍』の
者達が、無関係の住民を犠牲にしてはならないと、それこそが、2つの軍を決定的に分けてい
るものだという事を知っている。
 住民を盾にされたりしたら、また犠牲が増える。何としてでもここの住民達を守らなければな
らなかった。
「急げ。守りの体制を取れ!本部に応援を要請しろ!」
 アーサーが素早く命令を下す。しかしながら、それが間に合うのだろうか。無線が切られてい
る状態で、本部には即座に応援を要請できない。
 しかし、異変に気づいた本部が、無人偵察機を飛ばし、この状況を理解できるはず。無人偵
察機には、空対地兵器が搭載されている。
 アーサーの盾にしているジープの窓ガラスが砕けた。ほんの少し手前まで銃弾が飛び交って
いるのだ。
 幸い、まだこの集落にいた十人足らずの住民は、負傷していないようだ。まだ、今ならば取り
返しのつかないことにはなっていない。だが、銃声や爆発音が集落を取り囲む周りから聞こえ
てきている。
「隙を見て、反撃に移るぞ。森の中で視界が悪いが、逆に奇襲もできる。敵は何人ほどだ?」
 飛び交う銃弾の中でも、冷静にアーサーはそう言った。
「20名ほどです。数では負けていますが」
「応援が来る。それまで持ちこたえる」
 アーサーはそう言った。しかし住民まで巻き添えにしての死地はあまりにも突然過ぎた。
 アーサーは振り向き、住民達の安全を確認する。大人子供に至るまで怯え切っている。早く、
この状況を打破しなければ、必ず犠牲者が出る。
 しかしアーサーはその時、面々に誰かがいないことに気がついた。
「あの女はどこに行った?」
 あの極東人種の女がいない。更にはその娘らしき子供もいない。もしや、とアーサーは思う。

「アリアッ!アリアーッ!」
 梓は、自分の娘の名前を呼びながら、森の中へと分け入っていた。集落の方では激しい銃
撃が響きわたっている。まだ遠いところで起こっている戦争が、知らないうちにこの平和な集落
までやって来てしまったのだ。
 梓は早々に気づいていた。軍の者達に守られている顔の中に、アリアがいない。
 そういえば、一人の武装をした軍人に、アリアは抱えられて、自分たちが暮らしていたログハ
ウスから出てきていた。
 その後、数分も立たない内に、アリアが消えた。
 もしや、連れ去られたのではないか。梓はいてもたってもいられず、戦場さながらの銃声が飛
び交う中でも、外へと飛び出していっていたのだ。
「アリア。アリアーッ!」
 誰に聞こえてもいい。とにかく自分の方へと、アリアの声が返ってくればいい。梓はそのように
叫び続けた。
 しかしその声が通じないのか。それとも集落の方から聞こえる銃撃音にかき消されているの
だ。
 梓も自分のもとに危険が迫ってきていることは分かっていた。だが、アリアをこのまま放って
は置けない。自分のただ一人の娘なのだから。
 ところどころ足を取られながらも、梓は森の中に分け入っていく。ティッドと娘とともに、長く暮
らしてきた集落だが、このあたりの森は自然の森そのものだ。変える方角が分からなければ、
迷い込んで命を落とすことさえある。
 しかし、梓は構わなかった。とにかく森を分け入っていき、何としてでもアリアを救わなければ
ならない。その親としての使命感に突き動かされる。
 銃声の音が激しく彼女の耳を突く。もしかしたら、その辺りに武装した者がいて、自分を狙っ
ているかもしれない。だが構わなかった。激しい音のわずかな隙間にあるような音を聞き分
け、彼女はアリアを探した。
 どこかにいるはずなのだ。そして自分を求めた声を上げているはず。
 アリアの声がどうやっても聞こえない。しかし、梓はある音を聞き分けることができた。耳をつ
んざくかのように激しく響きわたってきている音。
 それはだんだんとこちらへと近づいてきていた。
 ヘリの音だ。それが近づいてきている。もしや、アリアは誘拐されようとしているのではない
か。嫌な予感が梓をよぎる。集落から離れた所にアリアを連れ去り、誘拐しようとしているので
はないか。
 梓だけではない、皆が知っている。この地方の国々では、裕福な人種を狙い、誘拐事件が多
発している。身代金目的で、『民族解放軍』などが集落だけではなく、都市さえも襲撃して、大
人子供例外なく誘拐してしまうのだ。『南アフリカ共和国』とてその犯罪は例外ではない。
 山奥の集落をわざわざ襲撃してくる武装勢力がいるとしたら、それは、誘拐目的である事が
ほとんどだ。
 梓は必死に自分の娘の居所を探そうとした。もしかしたら、今、降り立とうとしているヘリで連
れ去られようとしているのかもしれない。
 その方向へと梓はひた走る。茂みをかき分けていった。アリアはまだ10歳なのだ。誘拐をさ
れ、奴隷のように扱われる。そんな事に耐えられるはずがない。
「おっと、そこまでだ。それ以上近づくな。俺は、あんたの娘を預かっている」
 森の茂みをある程度いったところで、アリアを抱えた男と遭遇した。
「ママ!」
 アリアはそのように叫ぶ。怯えてはいるようだが、どうすることもできないといった様子で抵抗
の素振りを見せない。
「離しなさい!私の娘を!」
 そう言いながら、梓は、娘を抱えている男へと近づいていこうとする。だが奇妙だった。今、こ
の男は、アリアの事を、梓の娘だとはっきりと言った。何故、そんな事を知っているのだ?
 そしてその男の顔は、どう見ても梓と同じ、東アジア系の人種だった。梓は先入観から、『民
族解放軍』のような連中が自分達を襲ってきたのかと、そう思っていた。
 この『南アフリカ共和国』には、今も昔も幾つもの反政府勢力がいるそうだが、そこに東アジ
ア系人種の者達などいないはずだ。少なくとも梓はそう思っている。
「あんた達。何者よ。アリアを離せって言ってんのよ」
 梓は凄んでその男へと近寄ろうとした。梓の出身の日本語でも通じそうな雰囲気だったが、
英語で言い放つ。
この男は武器を持っているのか、ただの薄汚れた服を着て、力だけでアリアを抱えているだけ
にすぎない。
「離せって言ってんのよ!」
 相手が武器を持っていないだろうと踏んだ梓は、一歩足を踏み込んだ。
「おっと、待て。それ以上進もうとするな。そこには地雷が仕掛けてある。小さすぎて分からない
かもしれないが、機雷と爆竹を合わせたようなものだ。でも、威力は地雷並だぜ」
 本当にそうか、ただのはったりではないのか?梓はそう思いながらも、警戒はした。兵器や
武器弾薬など、戦いのことについてなど素人な梓だったが、可能な限りの警戒はしてみる。
 地雷が仕掛けてある?何のためにだ?
「あなた達は、いったい、何のためにアリアをさらおうとしているのよ!」
 梓は、地雷と言われるものに警戒を払いつつ言い放った。
「おい!急げ!もう軍の連中が来ている!」
 森の奥、ヘリが着陸したあたりから声が聞こえてくる。
「ああ、分かっている。俺がさらおうとしているのは、この子じゃあない、あんただぜ。あんた
が、黙って来てくれるっていうんならば、地雷を停止させる。だが、もしいうことを聞かないのな
ら…」
「おい、急げ、時間がない!」
 森の奥の声が言ってくる。
「分かっている!今すぐそっちに行く」
 そう言って、極東系の男は、アリアを抱えたまま、森の奥へといってしまおうとしていた。
「待ちなさい!」
 梓はそう叫んで、一歩を踏み出そうとした。
「しまった!」
 その刹那、激しい轟音が響き渡り、梓の体は何メートルも持ち上げられた。強烈な衝撃が彼
女を襲った。

 梓には何が起こったのか分からなかった。轟音とともに、何も聞こえなくなってしまい、そし
て、天地が逆転するかのように視界が森の木々、そして地面へと向く。更に彼女の体はしたた
かに地面にたたきつけられ、彼女は気を失った。

「ママ!ママ!」
 そのように叫びながら、北村梓の娘は、地雷で吹き飛ばされた母のもとへと駆け寄ろうとする
が、そこにはまだ他の地雷が埋まっている。極東系の顔立ちの男は、素早くアリアの体を捕ま
える。
「おっと危ねえ!まだそこには地雷があるんだぞ」
 そう言って男は、アリアの体を引っ掴む。
「おい、早く連れてこい!軍がもうすぐそこまで来ているんだぞ!」
 男の仲間が森の奥から呼びかけてきた。地雷に注意しながら男は、梓の体の近くまで行き、
地雷に接触しないように慎重に体を引き寄せようとする。
 しかしその時、発砲音が聞こえ、男のすぐ近くの地面の土がはじけた。
「動くな!そのままゆっくりと立ち上がり、手を高くあげろ!」
 男は舌打ちをした、軍の者達がすぐここまで迫ってきていたのだ。
「仕方ない!先に行っていろ!作戦変更だ!全員掴まるわけにはいかん!」
「こいつの仲間達を追え!」
 そこに集結してきた兵士たちに向け、銃を発砲してきた兵士は命令を出す。だが、彼らが動
き出した時、森の空き地に止めてあったヘリが飛び立とうとしていた。
「おい!何だあれは?」
「いや、大したものじゃあないぜ…」
 だが、『N-WNUA軍』の兵士は男に向かって銃を突きつけながら迫ってくる。
「お前は何者だ?ここで何をしている?」

 一方、集落にいたアーサーは、突然、銃撃が止んだことを知った。更に遠くの方からヘリが
飛び立っていく音が聞こえる。
「おい、今のヘリは何だ?」
 そのように先に行かせている部隊に向かって、アーサーは無線で問う。
(分かりません!そちらのヘリで追跡してください!また、正体不明の男を確保。子供を一人
と、負傷者一名、住民と思われますが重傷です!)
「ヘリだ!軍のヘリで、逃走したヘリを追跡しろ!」
「了解!」
 アーサーは指示を飛ばし、部下たちはすぐにその命令に従った。
「周囲の安全は確保できたのか?」
 と、無線に向かって言うアーサーだが、
(敵はおろか、無人兵器さえも見当たりません。確保できたのは男。極東系で、子供を一人連
れ去ろうとしていました)
 そのように兵士は言ってくる。
「極東系だと?何故こんなところにいるんだ?いいだろう。そいつを連れてこい!負傷者を即
座に救護施設へと運ぶ!」
 アーサーはいつの間にか、自分が住民にも聞こえる声で指示を飛ばしていたことに気がつい
た。
 すると、そんなアーサーに住民の一人が言ってきた。
「負傷者って何だ?まさか私の妻か?」
 さっき、ログハウスから連れ出した男だった。
「あんた。まだ完全に安全が確認していないから立ち上がるな!」
 そうアーサーは言うのだが、
「私の妻かと聞いているんだ!」
 その男が、さらにアーサーに詰め寄ってきた時、更に無線連絡が入った。
(負傷者は、アジア系の女性。連れ去られようとしていた子供の母親と思われます!)
「何ということだ?大丈夫なのか?梓は?」
 そう男は言ってくる。梓とは、発音からして、あの極東系の女の名前だろう。
「その女性だが、無事なのか?」
(重傷です。病院に緊急搬送の手配をしてください。それと、少佐に見ていただきたいものがあ
ります)
「それは何だ?いや、来てから話す。その男を遠ざけておけ」
 アーサーはそう部下達に命令した。男は兵士たちによって、無理矢理その場から遠ざけられ
ていく。
「無事なのか?無事なのか、妻は?」
「これから病院に搬送する!だから君は邪魔をするな」
 落ち着かない男に対して、アーサーはそう命じた。突然の出来事、そして自分の妻が重傷を
負ったともなれば、正気を失い、慌てるのも当然だろう。だが、ここは邪魔をさせるわけにはい
かない。
 まだ、どこに敵が隠れているかわからないのだ。
「例の、アジア系の男、誘拐しようとしていた男の方も連行しろ。軍部で取り調べを行う」
 アーサーは変わらぬ表情で、更にそのように命令を下した。
Next→
6



トップへ
トップへ
戻る
戻る